アムウェイのアジトにも連れ去られてみて考えた
（2018-06 追記。 こっちも読んでね：アムウェイなんて居場所なだけだよ）
私をアムウェイのアジトに案内してくれたのは、合コンで知り合った女の子。
当時の私はアムウェイとやらの名前も何も知らずに、彼女の「近所で仲間がパーティしてるから一緒に行こう」という言葉に興味本位でついていき、そこでお茶やケーキをふるまわれたり、一生懸命に鍋や洗剤のセールスをいただきました。
彼らの販売システムの胡散臭さや商売のやり口については、ググれば大量に出てきます。なのでここでは何も触れませんし、それらを批判することもありません。
私がここで伝えたいのは「俺はアムウェイなんか引っかからない。そんなのに引っかかるのは馬鹿だ」と思ってるあなただって、実は彼らと全く同じ心理構造で日常生活を送っており、彼らが馬鹿であなたが賢い、ということではないということです。
そこに「居場所」があっただけ
アムウェイのアジトにいた人を観察すると、おおよそ次のようなタイプの人が多かったと思います。
- 目立たない、おとなしそう
- かといって人の話に耳を傾けるタイプでもない
- なんとなくパっとしない、目に力がない
前回のエントリー「「手相の勉強をしている」と声をかけてくる人に連れ去られてみた」で私に声をかけてきた人と同質の空気を身にまとっていると言っていいでしょう。彼らは本当にアムウェイという集金システムで一攫千金を夢見ているのでしょうか。あるいはアムウェイに心から魅了され、製品の販売によって人々の役に立ちたいと願っているのでしょうか。
そこで私が見たのは、パーティやミーティングの名目で集まって「日常の傷を舐め合っているだけ」の集団でした。詰まる話、アムウェイが実質的に会員に提供しているのはコミュニティであり、彼らを結びつける共通の目標が「洗剤を売ってお金持ちに」という夢のあるストーリーに過ぎないということです。
- 会社（学校）でうまくいかない、会社（学校）の人とは失敗や苦労を共有できる信頼関係を作れない
- 家族とも、友達とも同様にそういう関係を築けない
そんな人に、自分の存在をなんとなく許してくれるゆるいお友達集団が現れた。アムウェイの話をしていれば共通の話題、会話には事欠かない。会話が下手でも、遅くても、どもっても、誰もイラっともしない、怒らない、嫌がらない。
山谷と日雇い労働者
山谷という街をご存じでしょうか。安い宿泊施設が密集し、定住所を持たない日雇いの労働者が多く集まる街です。最近ではその滞在コストの低さから、外国人バックパッカーにもよく利用されているようで、「人買いのヤクザモンが跳梁跋扈」「シャブの売人がウヨウヨ」「うなだれ、明日の希望も奪われた労働者が明日にも暴動」といった凶悪なイメージは薄れつつあるようですが、それでも暗く、複雑な街であることは間違いないと思います。
斡旋業者にカネを抜かれ、宿代と食事代を払ったら手元に殆ど残らない。それでも彼らが山谷にいる理由は何なのでしょうか？
山谷という街は彼らを受け入れます。安い宿、安い飲食店、分からないことを教えてくれる兄貴肌、消息を気遣いつつも深くは立ち入らない周囲の人間。街が人が、自分の存在を柔らかく受け止めてくれている。労働・現実という厳しい日常からの退避場所。
「なんやかんや斡旋業者に頼らざるを得ない」「彼らには肉体労働しかできない」と答えた方に聞きます。あなたは今の仕事以外に何ができるんですかね？その仕事だって、ボスに言われてやってるだけでしょ？
あなたの盲目的なお仕事=アムウェイ
あなたは嫌々ながらも毎日会社へ行って、うまくいくこともあれば失敗して上司にどやされることもある。同僚と酒を飲みに行って仕事の不満を言ってみたり、苦労を聞いてあげたりする。
これは会社の中での関係構築が成立し、あなたにとっては会社がコミュニティとして機能することに成功しただけで、その点で「会社で働いてる」ことなんて、アムウェイや山谷コミュニティ、カルト宗教に入っていることと本質的な部分では同じです。
あなたがもし唯々諾々と業務をこなしているならば、自分の仕事・自分の組織がアムウェイやカルトより正義である根拠や、社会的に価値を生んでいるのかどうかをきちんと考えた方が良いと思います。「自分的にはOK」なのはアムウェイの彼らとて信じて疑ってないわけで。
あなたが賢明で、アムウェイに入ってしまった人が愚かだったのではない。たまたま彼ら受け入れてくれた場所がそのような活動をする組織だった。ひるがえって、あなたの仕事は、正しく、また価値を生んでいると言えるでしょうか？
この点を疑えていない段階で、残念ながらあなたが「愚か」と断ずる盲目的な「アムウェイの中の人」や「カルトに騙されてる人」とあなたに、さして大きな相違点は見当たりません。
